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天狐あやかし秘譚
第114章 天道是非(てんどうぜひ)
『スクセを殺しても神宝の力が無効になる保証がない』
『神宝がどのような機序で死の未来を現実にするのかを解明しなければ元も子もない』
『そもそも、天狐を呼び寄せようとしている段階で、罠である可能性が高い』

宝生前や御池がそんな理屈でダリを止めようとした。
結局ダリが、ここに留まることになった決め手は、私が言った『皆でちゃんと調べて、その上でダリが力を発揮してくれるのが、多分一番私が助かる可能性が高い』という言葉だったと思う。

土御門との電話会議はこんな形で、特に何か結論らしい結論を得ないまま幕を下ろした。実際、事態が動いたのは、会議から7時間ほど経ってからだった。

電子会議システムには、陰陽寮本庁の図書室で見かけた高森が映し出されていた。実は今知ったのだが、この高森さんという人は、私がてっきり有能な図書館司書だとばかり思っていただけで、実は暦部門・図書衆(ずしょしゅう)の衆長・・・つまり位階で言えば『丞クラス』の陰陽博士だったのである。

陰陽寮暦部門図書衆『丞の一位』を冠する陰陽博士『高森京都(たかもり みやこ)』というのが彼女の正式な呼び名ということになる。

「綾音さんとダリさんが目撃した事柄、そして、京都支部での記録を参考に調査を行いました。まだ、はっきりと分かっていないこともありますが、何が起こったのかということはおおよそ見当がつきました」
時刻は夜中の11時に差し掛かろうとしており、皆も疲れているが、高森のこの言葉で、かすかに士気が上がったように感じた。

「まず情報を整理しましょう。
 綾音さんが見たスクセという女性が覗き込んでいた水晶球。これはダミーで間違いないと思います。実際に京都支部が持ち帰って詳しく分析しても、単なるガラス玉であることが判明しているわけです。同じく、その水晶球を直接支えていた台座部分も凝った作りではありますが、特段珍しいものではありませんでした。」

ここで、高森が一息つく。

「よって、綾音さん、ダリさんが目撃したという青白い光・・・これは台座を支える基部・・・金属製の円盤部分・・・そこから発していたのではないかと推測しました。つまり、スクセは神宝『沖津鏡』を水晶球を支える台座の基盤に見せかけて操っていたのだと思われます。」
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