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天狐あやかし秘譚
第114章 天道是非(てんどうぜひ)
点Aから徐々に赤色の線が伸び始め、最初の分岐を下、次の分岐を上、というように枝分かれする線を辿っていく。

「ちょうど、この赤い線が、選ばれた『現実』を現す・・・みたいにですね」

つまり、現在である点Aから、時間が経つと、ありうる未来のうちのひとつだけが『現実』となっていくわけだ。・・・ああ、そうか、だから『観測された事実』が『現実の状態』として『確定』していく・・・さっきの宝生前の説明した消しゴム理論と同じになっていくわけだ。

「ところが、神宝『沖津鏡』はこの時の流れを超越します。」

点Aから上の方に弧を描くように青い点線が伸びていく。そして、その点線が『ありうる運命の線』のひとつにぶつかった。

「まだ時間が点Aの時点であるにも関わらず、未来を『視て』しまいます。するとどうなるか?」

青い点線が交わった運命の線のところに青い点が現れ『B』と表示される。そして、その点Bに向かって、すべての『あり得る運命の線』がぐにゃりと曲がってBに接続されてしまった。

「あ・・・っ!」

あたかも、点Aから本来あったはずの多様な未来の分岐が、たったひとつに収束してしまうようになったかのように見える。

「そうです。沖津鏡が発動すると、多様だったはずの未来の可能性が、沖津鏡が見た『未来』に向かうように捻じ曲げられる。有り体に言えば・・・」

御池がやっと要領を得たみたいだった。高森の言葉を引き継ぐ。

「どんな選択をしようが、どんな意思を持とうが、確定した未来を避けることができなくなる・・・?」

え・・・それって・・・?

私は背筋がゾクリと震えるのを感じた。

スクセの笑み、
沖津鏡の鏡面に映し出された自身の最期の像、
そして、ダリの叫び声・・・

その全てが頭の中にフラッシュバックする。
高森の言葉が意味することが、ゆっくりと実感となって立ち上がってくる。

「じゃあ・・・私・・・は・・・?」
声が震える。
背中に冷たい汗が流れた。

「残念ながら、私たちの調査による最も妥当な結論・・・それは、
 『沖津鏡はそれが見た未来を絶対不可避の事実として確定させてしまう神宝』・・・ということです。」

その言葉に、私は目の前がスーッと暗くなるのを感じた。
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