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夜に咲く名前のない恋人達
第8章 「心配するな」
次の日の夕方。

ぷりんのメンタルがやられても、体調不良でも、今日もアイドルフェスは行われる。

ライブ前の控え室には、他のグループのアイドルも10数人待機していて、誰もが慌ただしく準備を進めていた。

ぷりんは鏡の前で、昨日泣き腫らした目元をメイクで必死に隠していた。

その時、控え室の扉が開き、姫が入ってくる。

「あ……おはようございます……」

ぷりんが挨拶をしながら姫の顔を見た瞬間、昨日の出来事が頭をよぎる。

無表情のルカに甘える姿。

ルカに愛撫されて乱れる姫。

心臓がギュッと締め付けられるような感覚に襲われ、慌てて視線を落とした。

姫は、いつもの不機嫌そうな表情のまま、通り過ぎざまに低い声で呟く。

「……ルカから伝言。心配するな、だって」

「えっ……?」

スマホを片手に文字を打ちながら、隣に座った姫の声から、特別な感情は感じられなかった。

昨日ルカに抱かれたはずなのに。

夢でも見た『心配するな』という言葉が突き刺さる。

ガタッ!!ガンッ!!

派手な音を立てながらメイクの準備を始める姫に、普段は誰も声をかけられない。

それでも勇気を出して問いかける。

「ルカくん……どこにいたんですか?」


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