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夜に咲く名前のない恋人達
第8章 「心配するな」
美緒は落ち込んだ表情で、瑛人を見たが、すぐに視線を逸らす。

瑛人くんは、可愛い子が好き……

私は……可愛くない……?

「ごめん……やっぱり……なんでも、ない……」

小さく呟いて、美緒は瑛人の袖を離そうとする。

すると瑛人がぷりんの手首をつかんだ。

「嘘だ。美緒は嘘をつくとき、目を逸らすから」

ドキッとする。

「……わ……私……瑛人くんと一緒にいるの、迷惑じゃないかなって……」

顔を伏せながら、ポツリと本音が溢れた。

瑛人は少し考えるように黙ってから、ニコッと笑った。

「バカ。迷惑なわけないじゃん」

いつものようにぷりんの頭を撫でる。

「心配するな」

「……ほんと?」

美緒の質問に答える事なく、背を向けた瑛人は白い霧に包まれた教室から出ていく。

「待って……瑛人くんっ……」

体は思うように動かず、追いかける事も、大きな声も出せないまま、瑛人は白い霧の中に消えていった。
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