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夜に咲く名前のない恋人達
第10章 「試してみる?」
響が女だと信じて疑わないぷりんは、少しの緊張を抱えながら響の部屋を訪れた。

ワンルームの部屋は綺麗に片付いていて、テレビ、パソコン、小さなテーブル、ベッドが配置されている。

飾り気のない空間は、中身が男という説得力があった。

ベージュのゆるめのニットに、白と黒のチェック柄の膝丈フレアスカート。
ラフな格好であるが、どこか無防備で女の子らしい雰囲気のぷりん。

「すごく迷惑かけちゃいましたよね、ごめんなさい……」

申し訳なさそうに言うと、響は台所でコーヒーを作りながら答えた。

「まさか写真を撮られるとは思わなかったな。もう大丈夫か?」

「一応……炎上はおさまりました」

その言葉に少しホッとしながら、ぷりんは自然とベッドに腰を下ろす。

相手が女だとわかった途端、どこか警戒心が緩んでしまっていた。

小さなテーブルに、コーヒーカップを置く響を見つめて呟く。

「まさか女の人だったなんて、知りませんでした……」

「言ってなかったし、仕方ないな?」

「背も高いし、カッコいいし……」

「そっか?」

「でも繊細で女の気持ちもわかるっていうか……優しくて頼れる人って感じが素敵だな。って思ってました」

何気ない言葉のつもりだった。

しかし、その瞬間、響の目の色が変わった気がした。

「俺の事。本気で女だと思ってる?」

低く響いた声に、ぷりんは驚いた。

「えっ……?」

戸惑うぷりんの隣に響が座る。

指先がそっと顎に触れ、唇が上向く程度に持ち上げられた。

一瞬で顔が迫ってきて、今にも唇が触れそうな距離に。

「試してみる……?」

囁かれた言葉に、ぷりんは言葉を失う。

言葉が出ない……

動けない……

ただ響の瞳に囚われたまま、時間が止まったようだった。

女の人だから……

大丈夫……

そう思ったのに、鼓動は速くなるばかり。

そっと目を閉じた瞬間、響の唇がぷりんの唇に触れた。


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