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夜に咲く名前のない恋人達
第11章 売上バトル
控え室で『変身セット』に着替えるぷりん。

姫はスマホを見たまま、あくまで気だるそうな態度を崩さない。

いつものことだけど、本当に何を考えているのかわからない。

サングラスをかけ、服装を整えれば、「アイドル・ぷりん」ではなく、ただの夜遊びに出かける女の子。

ちらりとこちらを見た姫が、少しだけ口角を上げる。

「ふーん、それっぽくなったじゃん。行くよ……」

控え室を出てタクシーに乗り込む二人。

「……姫先輩は、変装しないんですか?」

「私が『姫』だってバレたところで、あんたみたいに炎上しないから」

そう言い切る姿に、やっぱりこの人は強いな。と思った。

長年アイドルをしている姫は、一般常識とかけ離れている。

響が男か女なのかも、いまだによくわからないが、そういうシナリオを描いたのが姫なのかもしれない。

そう思えるほど常識とは違う発想を持っている。

ぷりんがタクシーの中でカラコンを入れている姫に尋ねた。

「あの……響さんって、本当は女の人なんですか……?」

「もし男ならルカよりも響がいいってわけ?」

そんな事を聞いていない。

恋愛体質の女は、姫のような思考をしているもの。

ただぷりんはこの前の夢を思い出して、ドキッとした。

夢の中の響の顔が思い浮かぶと、意識してしまい、声がどんどん小さくなっていく。

「そういうんじゃないですけど……」

俯いたぷりんは、手に乗せた財布を見つめた。

たった5万……

今の自分にできる精一杯……

ルカくんのために……

そう思いながら、タクシーは煌びやかなネオンの下、『ジュリア』の前に止まった。
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