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わたしの放課後
第16章 何もなかったみたいに


 おじさんが立ち上がって奥の部屋に行く。押し入れから布団を出して敷いてくれているのだろう。『おじさんのおかあさん』のお話は初めて聞いた。母と同じということなら、どこかの誰か…せいぜい『知り合い』の人とそういうことをして、それでいておじさんには何もなかったみたいに振舞う人…ということなのだろうか。そして、おじさんは、わたしみたいにどこかの誰かと同じようなことをしていたのだろうか。

 「お待たせ。ああ、『お待たせ』なんて言ったらレディーに失礼だったね」
 「いえ。ありがとうございます」

 わたしは布団の上で待つおじさんの隣に座った。

 「おじさんもわたしみたいな感じだったのですか?」

 わたしみたいな『子ども』とは言えずに曖昧に訊いてしまった。

 「そうだったかもしれないね。おじさんのおかあさんはみんな知っていたと思うけど」
 「そういう『時代』だったんですか?」
 「『時代だったから』と言っては言い訳がましいかな」
 「いえ、そんなことは…」

 わたしがしていることだって『言い訳』もなしに誰かに説明なんかできないのだろうし。でも、

 「そのときはそういうものだと思っていたんだ。人間って、やっぱりいつの時代も…ってことじゃないかな。まあ、昔は今よりも大らかな時代だったんだと思う」
 「そうなんですね」
 「今の時代となっては『言い訳』が必要なのはおじさんのほうだけ」

 おじさんが優しく囁いてくれる。おじさんはわたしにとっては『知り合い』以上の存在。それはわたしの気持ちの中で間違いないこと。おじさんにとってわたしは何なのだろう。

 「恵子ちゃんは何も気に病むことはないよ。恵子ちゃんは素敵な女性なのだからね」
 「ありがとうございます」

 『素敵な女性』と言われて素直にうれしかった。

 「恵子ちゃんのおかあさんもきっと素敵な女性なのだろうね」

 おじさんの言葉を母に伝えたいと思った。それはできないことだけれど。

 「じゃ…いいかな?」
 「はい…」

 わたしは目をつぶった。
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