この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夜をほどく
第7章 触れずにはいられない
「おはようございます」

何気ない挨拶。
他の社員と同じように、部長室のドアをノックし、紗江は入った。

光貴は、デスクに目を落としたまま、わずかにうなずいただけだった。
その沈黙すら、数日前までは“いつもの彼”だったはずなのに――今は、熱を含んだ傷のように、胸を締めつける。

ふたりだけが知っている夜が、ただの記憶になりはじめていた。
けれど、それは冷めるのではなく、かえって火種のように、じわじわと彼女を焦がしていた。

「この資料……本当に、これで?」

彼の声がいつもより低く、わずかにかすれていた。
背後に立つ紗江の指先が、紙から離れない。

「……じゃあ、直してきます」

目が合う。
瞬間、空気が止まった。

言葉も息遣いも、なにもかもが、あの夜の続きを求めていた。

「……待て」

彼が席を立ち、彼女の腕をつかんだ。

「部長……」

「やめろ。名前で呼べ」

その言い方が、ひどくわがままで、そして懇願のように響いた。

「……光貴さん……」

たった一言で、彼の瞳が濡れた。

ふたりの間にあった机が、もはや無意味な壁になった。
彼の指が、頬を、顎を、唇をなぞる。
触れてはならない場所なのに、触れずにはいられない。

「やっぱり、おかしくなる……君に会うと……」

彼の囁きは、頬にかかる吐息とともに、熱を孕んでいた。

「私も……もう、戻れない……」

次の瞬間、壁際に追い込まれた。
見慣れた部長室の中、外には誰もいない――けれど、声は殺した。

「誰か来たら……」

「来てもいい。止められないから」

彼のキスは、前よりもずっと深く、乱暴で、愛おしい。
スカートの裾に指がかかり、頬が熱を帯びる。

「もう、何度も夢に見た……君を、こうして……」

その熱が、職場という緊張感すらも燃やし尽くしていく。

ふたりはもう、抗えない場所へと足を踏み入れていた。
/96ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ