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夜をほどく
第14章 罅(ひび)
「ねえ、最近部長と親しくない?」

昼休み、同僚の咲良がふと口にした。
その声は何気ないようでいて、どこか探るような匂いがあった。

「……そんなこと、ないよ」

紗江はすぐに否定した。
でも、胸の奥が冷たい針で刺されたように疼いた。
昨日の夜、ベッドの中で、光貴の手が何度も自分を求めたこと。
彼の喉から漏れる熱い吐息を思い出すたびに、自分の体温が上がる。

――そんな顔、してたのかもしれない。

喫煙所では、結月がじっと煙を吐きながら言った。

「あんた、どうするつもりなの。続けるの?」

紗江は黙ったまま、黙々と紙コップのコーヒーを飲んだ。
言葉にした瞬間、何かが崩れてしまいそうで。

「奥さん、いるんだよ? 部長には。…その手、離してくれないよ?」

結月の声に棘はなかった。
けれど、その言葉はまっすぐに胸に突き刺さった。

夜――
光貴からの連絡が、久しぶりに途切れた。
いつもなら「帰った」とか「疲れた」とか、ひとことでもあったはずなのに。

画面を見つめたまま、紗江は気づく。
“あの夜”から、ふたりのバランスが微かに狂いはじめていた。

身体は求めていた。
心も、たしかに惹かれていた。
けれどその熱が、本当に愛と呼べるものだったのか――

冷たい洗面所の鏡の前、紗江は自分の顔を見つめた。
潤んだ目元、ふっとゆるんだ唇。
「幸せそう」と誰かが言うかもしれない。

でも、その奥にある不安と後悔は、誰にも見えなかった。

そして翌朝。
エレベーターの扉が開いた瞬間、光貴と目が合った。
いつものように振る舞おうとした。
けれど彼の目の奥に、うっすらとした距離があった。

「おはようございます」

彼がそう言ったときの声は、どこか知らない人のものだった。
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