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夜をほどく
第22章 終わりの始まり
辞表を出したのは、光貴だった。
上層部との話し合いの末、彼は自ら職を退くことを選んだ。

「俺はもう、君の上司じゃない」

最後の会議室で、静かに彼はそう言った。

その言葉に、紗江は胸が詰まった。
あの厳しかった背中が、今は寂しさに滲んでいる。

「本当に、いいの? 私が、壊したのかもしれないのに……」

「違う。君がいたから、壊れずにすんだ」

彼はふと微笑んだ。
弱さを見せるその表情に、紗江は涙をこらえることができなかった。

ふたりはその夜、最後の場所として選んだホテルに向かった。
煌びやかな街の光が、今だけはやけに遠く見えた。

「このまま、朝にならなければいいのに」

彼女が囁いた言葉に、光貴は黙って首を振った。

「朝は、必ず来る。でも……君の中に、俺がいればいい」

ベッドの上、彼の指が頬をなぞり、鎖骨をなぞり、
言葉では言い尽くせない想いが、熱と共に流れていく。

「ずっと……こうしていられたら」

「紗江……君を、奪いたいと思った。何度も」

「奪って……もう、全部、壊して」

荒々しく求めた唇に、ふたりの理性は溶けていく。

衣擦れの音、息遣い、掠れた声。
何度も名前を呼び合い、指を絡め、涙に似た吐息が枕を濡らす。

「好き……あなたしか、いらない……」

「君が、俺を壊すんだよ……でも、それでもいい……」

愛はすでに、戻れないところまで来ていた。

一線を越えたのではない。
その線を、自分たちで消してしまったのだ。

その夜、ふたりは終わりの始まりを肌で知った。
愛している。ただ、それだけでは済まされない世界で。
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