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夜をほどく
第23章 選ばれなかった朝
目を覚ましたのは、彼女の頬に触れた淡い陽射しだった。
ホテルのカーテンの隙間から洩れる光が、もう夜の終わりを告げていた。

隣にいるはずの彼は、いなかった。
その温もりの残るシーツの上で、紗江は小さく身を丸めた。

浴室のドアが開き、濡れた髪をタオルで拭きながら、光貴が戻ってくる。
彼の目に、昨日の熱はなかった。

「これから、どうするの?」

声を出すのが、ひどく苦しかった。
その問いに、彼は静かにシャツの袖を通しながら答える。

「妻とは……話した」

短い言葉に、時が止まる。

「……それで?」

「離婚はしない。子どもがいる。あの子に、父親の背を見せたくて」

その声は、責任と罪と、そして未練のすべてが混じっていた。

「……私とのことは?」

「後悔はしていない。でも……これ以上、君を抱えきれない」

その瞬間、涙は出なかった。
代わりに、喉の奥が焼けるように痛んだ。

「あなたがいなきゃ、私は……」

「生きていける。俺が知ってる君は、そんなに弱くない」

淡々と告げる声が、優しくて、酷だった。
心をえぐるような言葉なのに、彼の瞳は今も愛を抱えていた。

「ねえ……最後に、キスして」

それが、紗江のわがままの限界だった。

光貴は黙って近づき、額に口づけを落とした。
唇ではなく、額――そこに触れた優しさが、彼の決意を物語っていた。

それが、別れの合図だった。

ホテルを出たあと、ふたりは別々の方向へ歩き出した。
何も言わず、振り返りもせず、ただ静かに。

彼の背が、角を曲がって消えた瞬間、
紗江は小さくつぶやいた。

「さようなら、私の初恋」

空は青かった。ひどく、残酷なほどに。
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