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夜をほどく
第29章 新しい光
春の光が、窓から柔らかく差し込むオフィス。
紗江はいつもの席に座り、資料を整理していた。

佐伯が隣に腰掛け、ふと声をかける。

「最近、顔色がいいですね。何かあったんですか?」

その問いに、紗江はわずかに笑った。

「少し、自分の時間を大事にしようと思って」

「それ、いいことですね」

彼の笑顔は、まっすぐで優しかった。
紗江はその視線に、なぜか心が安らぐのを感じていた。

「……佐伯さんって、恋愛とか、どう考えてます?」

唐突な質問に、佐伯は驚いたように笑う。

「僕ですか?正直、あまりうまくないんですけど。でも、誠実に向き合うしかないですよね」

紗江はその言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなるのを覚えた。

「誠実か……」

彼女はそっと目を閉じて、過去の痛みをそっとしまい込む。
新しい光は、ゆっくりと差し込んでいた。
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