この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夜をほどく
第31章 触れあう夜

「……もう少しだけ、話していきませんか?」
佐伯の申し出に、紗江は少しだけ迷ってからうなずいた。
行き先は、会社近くの小さなバー。
柔らかなジャズが流れ、琥珀色の照明が二人を包んでいた。
グラスの中で氷が音を立てる。
佐伯はウイスキーを少しだけ口に含み、紗江を見つめる。
「……俺、ずっとあなたに惹かれてました。
強くて、でも時々脆そうなところ。見てて……放っておけなかった」
その言葉に、紗江の胸がきゅっと締めつけられる。
「そんな風に見えてたんだ……私、自分じゃ全然わからなかった」
佐伯がそっと彼女の頬に触れる。
その手は、熱を含んでいて、震えていた。
「……触れても、いいですか?」
紗江は答えなかった。ただ、目を伏せてうなずいた。
次の瞬間、唇がそっと重なり合った。
やさしく、慎重に、でも確かに求め合うように。
触れた肌の奥に、まだ誰のものでもない温もりがあった。
それは、過去の痛みをなだめるような、穏やかで甘い熱だった。
「……佐伯さん……」
彼女の声は震えていたが、それは恐れではなかった。
もう一度、誰かを信じてもいいのかもしれない。
そう思える、かすかな光がそこにあった。
佐伯の申し出に、紗江は少しだけ迷ってからうなずいた。
行き先は、会社近くの小さなバー。
柔らかなジャズが流れ、琥珀色の照明が二人を包んでいた。
グラスの中で氷が音を立てる。
佐伯はウイスキーを少しだけ口に含み、紗江を見つめる。
「……俺、ずっとあなたに惹かれてました。
強くて、でも時々脆そうなところ。見てて……放っておけなかった」
その言葉に、紗江の胸がきゅっと締めつけられる。
「そんな風に見えてたんだ……私、自分じゃ全然わからなかった」
佐伯がそっと彼女の頬に触れる。
その手は、熱を含んでいて、震えていた。
「……触れても、いいですか?」
紗江は答えなかった。ただ、目を伏せてうなずいた。
次の瞬間、唇がそっと重なり合った。
やさしく、慎重に、でも確かに求め合うように。
触れた肌の奥に、まだ誰のものでもない温もりがあった。
それは、過去の痛みをなだめるような、穏やかで甘い熱だった。
「……佐伯さん……」
彼女の声は震えていたが、それは恐れではなかった。
もう一度、誰かを信じてもいいのかもしれない。
そう思える、かすかな光がそこにあった。

