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夜をほどく
第34章 再会の傷痕
「久しぶりだな」

西園の声は、以前と何ひとつ変わらなかった。
低く、強引で、すべてを見透かすような響き。

待ち合わせの店に現れた彼は、相変わらずスーツの着こなしに隙がなかった。
けれど、どこか疲れた目をしていた。

「元気そうだな。結婚生活は……うまくいってるのか?」

「その話をしに来たんじゃないでしょ」

紗江は声を抑えたが、手のひらは汗ばんでいた。
過去の記憶が、彼の目を見るだけで蘇ってくる。

愛された。
そして、傷つけられた。

「悪かったって思ってる。……あの時は、俺も、余裕なかった」

「今さら謝ってどうなるの?」

彼の顔を見ていると、気持ちが乱れる。
もう終わったはずなのに、怒りも、哀しみも、まだ残っていた。

西園は、ふと視線を逸らした。

「……最近、お前のことをよく考えるんだ。
会社を辞めたあと、俺は……何もかも失った気がしてさ」

「私は、あなたの後ろ姿しか覚えてない。
一番苦しかったときに、何も言わずに去っていったあの背中だけ」

冷たい言葉のはずなのに、涙がにじむ。
西園の手が、テーブル越しにそっと伸びてきた。

「遅かったかもしれないけど……やり直せたらって思ってる。今でも、お前のことが――」

「言わないで。……今はもう、誰かの腕の中にいるから」

そう言った自分の声が、少し震えていた。
でも、目はそらさなかった。

西園の指先が、ゆっくりと引いていく。

会いたいと思ったのは、終わりを確かめるためだった。
その答えは、もう胸の中にある。
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