この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夜をほどく
第37章 朝の背中、沈黙の温度

カーテンの隙間から差し込む光が、肌の上に淡く影を描いていた。
紗江は目を覚ますと、隣にいる佐伯の背中を見つめた。
呼吸は静かで、眠っているのか、あるいは目を閉じているだけなのか――わからない。
昨夜、あれほど求め合った身体の余韻が、まだじんわりと残っていた。
熱は引き始めていたが、胸の奥の痛みはむしろ深まっていた。
「……起きてるんでしょ」
小さく呟くと、佐伯の肩がわずかに動いた。
彼はゆっくりと振り返り、目を細める。
「おはよう」
その声は、いつもより少し低く、けれど優しかった。
紗江は微笑み返しながらも、自分の手を胸元で握りしめる。
あたたかく、幸せなはずなのに、なぜか不安でたまらない。
「私たち……これから、どうするんだろうね」
それは唐突な問いだった。
けれど、今言わなければ、何も変わらない気がした。
佐伯は一瞬だけ視線を逸らし、それから天井を見上げた。
「わかんねぇよ、そんなの。
ただ――もう、お前なしじゃ、苦しいとは思う」
その言葉に、胸がぎゅうっと締め付けられる。
彼もまた、同じだけの痛みを抱えている。
だがそれは、幸せの確信ではなく、共犯者のような、後ろめたい愛の感触だった。
沈黙の時間が流れる。
シーツの皺が妙にくっきりとしていて、現実を突きつけてくる。
「……でも、私はあなたと一緒にいたいと思ってる」
やっと出せた言葉は、震えていた。
佐伯は、その言葉にゆっくりと手を伸ばし、紗江の髪をなでた。
「俺も、そう思ってる」
その声には迷いがあった。
けれど、確かに――愛があった。
紗江は目を覚ますと、隣にいる佐伯の背中を見つめた。
呼吸は静かで、眠っているのか、あるいは目を閉じているだけなのか――わからない。
昨夜、あれほど求め合った身体の余韻が、まだじんわりと残っていた。
熱は引き始めていたが、胸の奥の痛みはむしろ深まっていた。
「……起きてるんでしょ」
小さく呟くと、佐伯の肩がわずかに動いた。
彼はゆっくりと振り返り、目を細める。
「おはよう」
その声は、いつもより少し低く、けれど優しかった。
紗江は微笑み返しながらも、自分の手を胸元で握りしめる。
あたたかく、幸せなはずなのに、なぜか不安でたまらない。
「私たち……これから、どうするんだろうね」
それは唐突な問いだった。
けれど、今言わなければ、何も変わらない気がした。
佐伯は一瞬だけ視線を逸らし、それから天井を見上げた。
「わかんねぇよ、そんなの。
ただ――もう、お前なしじゃ、苦しいとは思う」
その言葉に、胸がぎゅうっと締め付けられる。
彼もまた、同じだけの痛みを抱えている。
だがそれは、幸せの確信ではなく、共犯者のような、後ろめたい愛の感触だった。
沈黙の時間が流れる。
シーツの皺が妙にくっきりとしていて、現実を突きつけてくる。
「……でも、私はあなたと一緒にいたいと思ってる」
やっと出せた言葉は、震えていた。
佐伯は、その言葉にゆっくりと手を伸ばし、紗江の髪をなでた。
「俺も、そう思ってる」
その声には迷いがあった。
けれど、確かに――愛があった。

