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夜をほどく
第38章 揺れる日常、ふたりの距離
月曜の朝、会社のエレベーターはいつもより少し静かだった。
紗江は佐伯と距離を取るように、わざと別のフロアで降りた。
あの夜から、まだ三日しか経っていないのに、肌に残る熱と心のざわめきは、まるで昨日のことのように蘇ってくる。

「……元気なさそうね?」

昼休み、屋上で煙草に火を点けた梨花が、横目で紗江を見る。

「そう見える?」

「見える。てか、バレバレ。肌は潤ってるくせに、目だけ疲れてるもん」

からかうような声に、紗江は苦笑いを浮かべた。

「ほんとにさ……どうしてあんな人、好きになっちゃったんだろう」

吐き出した言葉は、自分の耳にも苦く響く。
佐伯との関係が身体だけのものじゃなくなったぶん、紗江の中で“現実”が重くのしかかってきていた。

既婚同士の関係。
一歩間違えば、すべてを失う。

「ねぇ、紗江」

梨花が煙をくゆらせながら、静かに言った。

「欲しいものを選ぶときってさ、何かを手放す覚悟もいるよ? それが何かは、あんたが決めるしかないけど」

その言葉は、重く胸に沈んだ。
ただ好きになるだけでは、何も守れない。
何も得られない。

オフィスに戻ると、佐伯はいつもの厳しい表情で資料を睨んでいた。
ふたりの視線が、一瞬だけ交わる。
その一瞬に、熱と痛みと、決意のようなものが宿った。

けれどすぐに、何事もなかったかのように、彼は視線を外した。

距離を保つことで、保たれている関係。
けれど、それは同時に、壊れる前の静けさでもあった。
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