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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第13章 一気呵成のカタルシス
裕樹は社会人二年目、夏の終わりを迎える頃に、一人暮らしを始めるために地元を離れることになった。

二十数年住んだこの町で、例のプレーパークを横切った時、記憶が鮮やかに蘇る。

遡ること六年前、高三のあの夜。

葵のメロンのように瑞々しい柔肌、舌足らずの艶声、露出をした時に全身を刃先でなぞられるような背徳感。

それらは今でも裕樹の身体の奥に焼き付いていて、何度もひとりで繰り返し再生してきた。

あの夜を境に、誰とも関係を持てないまま六年が過ぎていた。

恋愛の機会がなかったわけではない。

けれど奥手な性格が災いし、いざという場面で後一歩を踏み出せず、葵との夜の記憶だけを抱いて過ごしてきた。

同時に思うのは、同い年とはいえ、葵を自分の醜い欲望に付き合わせてしまったという後悔。

けれどそれ以上に、忘れられない快感として、確かに残っている。

葵から動画が送られてくることはなかった。

今はまだ褪せない記憶も、いずれは風化していくのだろう。

裕樹はあの夜を忘れないために、そして自らの罪を告白するために、記録に残すことを決めた。

美術部だった葵のように、絵が得意なわけでない。

でも、文章でなら自らの罪を形にできると考えた。

そうして書き上げたのが、フェイクを混ぜたノンフィクション小説。

タイトルは「愛すべき肉塊」。

葵の肉体を、何よりも愛していた──そんな誰にも言えない独白を綴った物語。

秋野 空(アキノ ソラ)というペンネームを名乗り、WEB小説として投稿すると、思いの外、「いいね!」のリアクションがついたり、ファンになってくれる読者も現れた。
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