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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第1章 青天の霹靂
葵が隣の席になってからというもの、裕樹は授業中も心ここにあらずだった。

真剣にノートを取っている最中の、その無防備な双丘は、いくら見ても指摘されることはなかった。

普段はクラスでもあまり目立たない葵だが、近くで見ると、整えられた短いマッシュショートも、伏せた長いまつ毛も、視線を奪う。

必要以上に話すタイプではなく、どこか冷気をまとったような静けさがある。それがまた、他の男子と違う距離の取り方を誘っていた。

(三原さん、どんなふうに誰かと話すんだろう?)

自分でもよく分からない感情を、裕樹はただ「気になる」とまとめていた。

普通なら恋と思われるその一連の感情も、裕樹場合は例外だった。

なぜなら、裕樹は葵の大きい胸が気になるだけなのだから。

五時間目が終わり、帰り支度をしようとしたとき。

隣から、氷のように澄んだ小さな声が落ちてきた。

「…話したいことがあるんだけど。」

振り向くと、葵が立ったままこちらを見ている。

表情は静かだが、少しだけ眉が寄っているように見えた。

(うわ……絶対なんか怒ってる)

胸のあたりがひゅっと縮み、裕樹は思わず頭を掻いた。
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