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四谷荒木町の女〜再会の熱い夜
第2章 再会と誘惑
 ……そういえば、しのぶもこんな風だった。恋人同士になってから、何度キスしても、恥じらいを見せるかわいい女だった。

 口づけを交わすうちに、抱いている女の身体が柔らかくなってきた。緊張がほぐれてきたようだ。そのタイミングで強く抱きしめ、柔らかな感触の唇の隙間から舌を入れてやる。

「んんっ……」

 うめきのような喘ぎのような息をもらし、うっとりと目をつむっている女に口づけを。唇を押しつけ合い、舌と舌を絡ませ、お互いの唾液を啜る。最初はぎこちなかった反応が、徐々に積極的になってきた。

 ……かわいい女だ。男には慣れているだろうに。

 本当に、今日会ったばかりのこの女が別れた恋人に思えてきた。

「しのぶ……」

 昔の恋人の名を、女の耳元でささやいてみる。すると女の唇が動き、なにか言った。

「……二階に部屋があるわ。続きはそっちで」

 訝しむ彼の腕を白い手が捉え、そっと引いた。

「ああ……わかった」

 先に立って歩く女の後ろから付いていく。その歩き方……後ろ姿まで、そっくりだ。

 ……まさか本当に。いや。そんなわけ無い。そんな都合の良い偶然などあり得ない。

 込み上げてきた疑問を打ち消し、馬鹿げた妄想を内心で苦笑する。

 ……今はこの女が、今夜だけは彼女はしのぶだ。

 今だけは。
 それでいい。
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