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第5章 はじめての腟内射精

とはいえ、佳織の中には夫に対する気持ちが残っているはずで。
理央はそれを強引に引き寄せたくなかった。
だからこそ、冴子に甘えたくなってしまう。そんな思いを抱えたまま、土曜日を迎える。
十四時前、新宿のTOHOシネマズ。
いわゆるゴジラビルの前に、理央は足を運んでいた。
ビッグサイズの黒いTシャツに、薄い青地のハーフパンツ。白いソックスにハイカットのスニーカー姿だった。――自分では気に入っているが、彼女にどう映るのか少し不安になる。
そわそわしていると、「お待たせ」と声をかけられる。

服を買ったのか、大きめの紙袋を肩にかけ、冴子が軽やかに現れる。
深めにカットされたVネックの白いカットソーに、黒のワイドパンツを履いている。足元は茶色のブーツ。目元はサングラスで隠れていた。

「悪いわね、新宿少し遠かったでしょう」

冴子は買い物を済ませたかったらしく、新宿で待ち合わせを希望した。
理央の家の最寄りからは会社の最寄りを過ぎて、新宿は一本で行ける場所だった。
とはいえ、会社を越えて新宿に呼び出されたことに、どこか現実感を揺さぶられる思いがあった。

「お昼食べた？」

「あ、いや……まだ」

「お酒飲みたい？ ビルの中に適当に飲食店入ってるからそこでもいいし。――まあ今日は食事じゃないほうに沢山付き合ってもらいますが」

冴子はサングラスの奥で目を細めて笑った。

「あ、あの……その……」

「ん？」

「飲むより、あの、僕……」

理央はぎゅうっと目を閉じる。冴子は意図を察して「エッチ」と耳元で囁いた。
耳をかすめる声に、理央の背筋がぞくりと震える。

「ふふ、じゃあラーメン食べ行こ」

理央の腕に、冴子は自然に腕を絡める。

「えぇ、飯塚さん、ラーメン食べるの！」

「食べるよ～。食べなさそう？」

そんな庶民的なものを食べるなんてと彼女の好感度が上がる。
それに――腕に触れる冴子のふわふわの胸。
さらに、いつもの柑橘の香りではなく、重めの甘い香水が鼻腔を伝い、不意に胸が高鳴る。今日は彼女にとって〈ソノ日〉なのだと悟り、嬉しくなった。