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◯◯と私
第2章 店長と私
「て、店長!」
「はははっ」

 完全に私の反応を楽しんでいる……!
 こういう時の店長は、いつもとはまた違った微笑みを見せる。その声の低さからなのか、その身長の高さからなのか……。そんな大人の余裕みたいなものを見せつけられると緊張してしまう。

「正直、春田さんの言う通りそこまで切羽詰まってるわけでもないよ。春田さんがほぼフルで入ってくれているし……。でも、無理させちゃあ良くないかなと思ってね」
「えっ、私がですか?」
「うん。ほら、彼氏くんが心配するじゃない?」
「!」

 目を丸くした私に、店長はまたいつものように微笑む。

「あの、それって……」
「こんにちはー」
「!!」

 今度は心臓が跳ね返りそうなくらいびっくりしてしまった。
 お客さんが来たのだ。

「じゃあ、お願いします」
「あっ、あの、店長っ」

 店長は私が冷や汗をダラダラとかいているのを全く気にしていないようで、鼻歌を歌いながら配達の準備のためにお店の裏へ戻って行ってしまった。
 なぜ私に彼氏がいることを店長が知っているのか、いつから知っているのか気になって仕方なかったけれど、その後はいつも手が空くはずの時間にお客さんが来たり、注文の電話がかかってきたり、店長も配達でほぼいなかったりと、気付けば閉店の19時を回っていた。

 閉店作業を終え、最終確認も終えて裏へ戻ると、休憩室で店長が近くのコンビニで買ってきたであろう焼きうどんを食べていた。

「店長、戻られてたんですね」
「春田さんお疲れ様」
「お疲れ様です」
「午後はちゃんと仕事が手についたかな?」

 ドキリ。
 視線を落としたまま店長はなぜか嬉しそうに言った。

「い、いつから、し、しってたんですか」
「ふふ」

 焦りが声に出てしまう。
 店長が隣の椅子を引き、コンコンと右手の中指で叩いた。

「あの……店長、私、今日は……」
「リクくん、だっけ?」
「!!」

 息をのみ、静まり返った空気の中、私は店長の隣に腰を下ろした。
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