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防音室で先輩に襲われて…
第1章 たくされた居場所


 あの日……
 ここ秀悠高校の卒業式


「おーい、辻(ツジ)?」

「……っ、先輩……」

「ん?…もしかして泣いてるのか?」

「な…泣いていません…!」

「って言いながらますます泣いてるし…」

 先ほど式を終えたばかりの上坂(カミザカ)が、ひとりの女子生徒のところに駆け寄った。

 他にも卒業生と別れを惜しむ在校生とで溢れかえった講堂の前で、自らその輪に飛び込む勇気のない彼女は、隅のほうで遠巻きに見守っていたのだ。

「俺が卒業して少しは寂しがってくれるのか?」

「…当たり前じゃないですか」

「ハハッ!辻はいい " 後輩 " だな!」

「……」

「どうかしたのか?」

「……いいえ」

 涙をぬぐう彼女が、ますます表情を暗くして俯く。

「先輩がいなくなるのが、心細いだけです……」

「まー俺、大学は東京行くからなかなか帰ってこれないけど……こっちに帰ってきた時は顔だすから」

「…っ…上坂先輩!」

「……ん?」

「あ……あの、先輩が向こうへ行っても、わたし
 ときどき……連絡してもいいですか?」

「はは!なにそれ当たり前だよ。ちゃんと電話番号教えただろ?」

「──…!はい…!」

「何かあったらいつでも電話すればいいから。あ、LINEも教えたっけ?どっちでもいいぞ」

 そして上坂は、背の低い彼女の髪をガシガシと掻いた。湿っぽくなりがちなこの場で、歳上らしい微笑みを浮かべる。



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