この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
防音室で先輩に襲われて…
第4章 もうその優しさに甘えないから
ここが防音完備の放送室でなかったら…とっくに誰かが駆け付けたとしても可笑しくない。
「もう先輩に甘えませんからぁ!…ひとりで頑張りますから…!からかうのはやめて──…っ」
「──ッ」
暴れだす寸前の乃ノ花
椎名は、今度こそ真正面から、その小さな身体を抱き締めた。
ガタガタと椅子が鳴る
乃ノ花は彼の腕から逃れようとするが、それでも椎名は力強く彼女を離さない。
(どぉして──…ッ)
「乃ノ花──」
「嫌、だ、先輩ッッ」
(ダメだまた……先輩に惹かれてしまう)
(わたしの弱さや人恋しさが──…先輩にすがってしまう、甘えてしまう)
(わたしなんかが先輩を好きになって迷惑かけたくない──!)
でも───
「……ぅ…ぅ…ッ…………ぅぅ」
「……」
男の広い胸に抱き留められると、中途半端に漏れてしまった弱音が涙となって次々と溢れ出す。
それくらい乃ノ花は寂しかった。体力的にも気持ち的にも、とっくに限界だったのだ。
毎日、毎日、朝礼前と下校時のアナウンス。部員はひとりだから、ぜんぶ乃ノ花がやるしかない。
高2だから勉強だって大変だ。塾の宿題もたくさんある。
それでも隙間時間を見つけては、コンクールに向けて練習をしないといけない。体外的な活動のひとつもなければ、それこそ部活動とは認めてもらえないだろう。
だから、がむしゃらに頑張った。
(でも誰もわたしを褒めてくれない)
両親も、学校の先生も、部活を諦めたほうがラクだと彼女に言い聞かせる。
(誰も味方になってくれない)
そんな中……たった、ひとり
「大変だよね……
偉いね、乃ノ花ちゃん…偉かったね」
この男だけが乃ノ花をバカにせず、彼女の味方でいてくれたのだ。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


