この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
防音室で先輩に襲われて…
第6章 そういう涙は興奮しない
" 素敵 " という言葉自体はそこかしこにありふれている。しかし彼の興味をひいたのは、その時の言葉が含み持つキラキラとした響きであった。
飾り気のない、クセの無い声で、しっとりと控え目な話し方で
ああ……そうか、彼女は本心でこの言葉を使っているのか。わざわざ気に留める必要もないであろう、あまりに些細な出会いに。
椎名はあの日、 " 自分に欠落している何か " ──その答えに辿り着くためのヒントを見付けた気がした。
(あれがきっかけで……俺は乃ノ花を知った)
放送室を訪ねれば声の主がわかった。
椎名が持たないものを、持っている乃ノ花。
(俺が持たないものを持っている女……)
ならば乃ノ花が生きる世界は、明るく温かいに違いない。冷めた世界に生きる椎名とは、まったく別の世界にいるに違いない。
──そう思っていた。
…だが現実は違った。
(乃ノ花は毎日ひとりで孤独に戦っていた)
いや─……孤独 " と " 戦っているのかもしれない。現実の乃ノ花はとても窮屈で、生きづらい世界で戦っているのだ。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


