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防音室で先輩に襲われて…
第8章 イジメラレ

 耳の横でペンを回しながら、ひととおりの問題にざっと目を通す。

 初めは文法問題。その後はリーディングで英語の長文が書かれている。椎名は先にページをめくり問題文を確認した後、日本語の文章を読み進めているかようなスピードで、視線を走らせている。

 奇妙な沈黙が流れる──…そこでは乃ノ花の乱れた呼吸と、低い機械音だけが聞こえていた。

(先輩、また何か企んでるの…?)

「ふーん、これ大学入試の過去問だよね。そこそこの大学の二次試験…。乃ノ花ちゃん高2なのに、もうこんなの勉強してるの?」

「は、はい、その、いつも解けないけど…っ」

「乃ノ花ちゃん勉強得意だったかな」

「普通、です。学校でもいつも平均点…!だからお母さんが心配して、塾では難しいコースにはいるべきだって…」

「心配して?………………へぇ」

 椎名がテキストの裏面を見ると「国公立医学部コース」と書かれていた。

 それからすぐに先ほどのページに戻り文法問題から解き始める。

「君……医者になりたいの?」

「は、はい」

「どうして?」

「どうして?…って言われても…!」

 問題を解きながら話しかけてくる椎名。器用だと思った。

「…ッ…わたしはお父さんが医者なので…だから、わたしも、将来はお医者さんにならないといけないです」

「 "ならないといけない" ?…ハハ」

「な、何か変なこと言いましたか…?」

「……ハァ」

 乃ノ花の話を聞いて軽く笑い…その後の溜息。椎名が何を思っているのかわからない。



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