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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第3章 義息~超えてはいけない境界線(2)
「ただいま~」

娘夫婦はソファに体を沈め、とりとめもないテレビ番組を眺めながら、重箱の隅をつついていた。ローテーブルの上には何種類かの銘柄の日本酒の瓶が並び、二人は小さめのグラスを手に、親密な角度で寄り添っている。

「あ、ママ、おかえり」と娘が言った。声の輪郭はすでに少し溶けかけていて、子音がわずかに曖昧になっていた。

「ねえ、イオンに行かない? 福袋を買いたいんだけど、車を出してよ」

「いいけど、葉月、結構飲んでいるでしょう? 大丈夫なの?」

「ママ~、大丈夫だって。そんなに酔ってないから」

「すみません。飲ませたのは僕なんです。でも、葉月はお義母さんが心配するほどは飲んでいないと思います。何かあったら僕が面倒を見ますから」

* * *
イオンで福袋を買い、年始用の買い物を終える。キャリーは買い物袋で一杯になる。長女はまだ他に用事があるらしく、私と樹を残して店内へ戻っていった。

車に戻り、後部座席のドアを開け、私は腰を屈めて荷物を詰め込む。

そのときだった。

誰かの両の手のひらが、私の腰の左右をそっと挟み込んだ。涼介君の手だった。純粋に荷物の積み込みを手伝うにしては、その接触はあまりにも長く、そして明確な意図を含みすぎていた。

「お義母さん、大丈夫ですか?」

彼は至極もっともらしい声のトーンで囁いた。両の手は私の腰骨のあたりを、確かな圧力で捉えている。私は「やめて」とは言わなかった。同時に、その手を振り払うこともしなかった。ただ、もしその指先が少しでも卑猥な角度で滑ったり、私の尻の丸みに触れたりしたら、そのときは躊躇なく拒絶しようと、頭のどこかで冷ややかに計算していた。

「大丈夫よ。この荷物、重いわね。ちょっとここには置きづらい……ねえ、ここを手伝って」

「分かりました。お義母さん、それ重いですから僕に任せてください」

彼は後部座席へ身を乗り出し、屈んだ私の側に寄り添うように体を密着させてくる。彼の顔が、私の顔のすぐ近くにある。私の心臓が、まるで冷たい井戸の底に石を落としたときのように、奇妙な跳ね方をした。

このときからだろう。長女のパートナーでありながら、彼を一人の異性として意識し始めたのは。心の中の天秤が、静かに、しかし大きく傾く。芽生えた未知の感覚に狼狽し、私はその気持ちを無理やり奥へと押し込めた。
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