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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第4章 義息~超えてはいけない境界線(3)
静かな夏の夜だった。湯上がりの微かな体温を残したまま、私はリビングのソファに身を投げ出し、日々の生活の澱のような疲労に流されるまま、浅い眠りの淵を漂っていた。
「お義母さん、お義母さん」
耳のすぐそばで低く響く声に、私は意識の薄皮を剥ぎ取るようにして目を覚ました。視界のピントが合うと、すぐ隣に亮介くんが腰掛けていた。
「あ、亮介くん。ごめんなさい、私ったら、うっかり眠り込んでいたみたい」
「毎日大変ですよね。本当にすみません、ありがとうございます」
「いいのよ、気にしないで。ちっとも大変だなんて思っていないし、当たり前のことをしているだけだから。あら、もうこんな時間。葉月もとっくに寝ているし、亮介くんもそろそろ休んだら?」
「明日は休みですから、夜更かししても大丈夫なんですよ。それよりお義母さん、もしよかったら、寝る前に少しマッサージでもしましょうか?」
その言葉に、私は一瞬だけ呼吸を止めた。どう答えるべきだろう。マッサージという名詞の響きだけで、胸の奥の冷暗所で、名付けようのないざわめきが小さな輪を描いた。
「いいわよ、そんな。亮介くんのほうが疲れちゃうもの」
「僕なら平気です。お義母さんの役に立てることなんて、これくらいしかありませんから。さあ、そこに座ってください」
「じゃあ……少しだけ、お言葉に甘えようかしら」
私がソファに座り直すと、彼は私の肩に両手を置き、優しく、しかし確かな力加減で揉みほぐし始めた。私は昔から頑固な肩こりと頭痛に悩まされていて、肩の筋肉はいつも冷えた粘土のように固まっており、ここ最近の育児の手伝いでその強張りは限界に達していたのだ。
彼の親指が的確にツボの深みへと沈み込むたび、心地よい痺れが走り、私の背筋が微かに震えた。指先は肩から肩甲骨の縁へと滑らかに移行し、固まった筋肉の繊維をひとつひとつ丁寧に解きほぐしていく。
「お義母さん、肩の周りが驚くほど硬いですね。すっかり凝り固まっていますよ。上からしっかり体重をかけたいので、そこにうつ伏せになってもらえますか」
私は促されるまま、ソファの上に身を伏せた。彼は私の開いた脚のあいだに両膝を割り込ませるようにして跨がり、先ほどよりも一段と強い圧力を肩周りに加え始めた。ぐっと沈み込む親指の重みが、私の身体のいちばん深い芯を捉えていた。
「お義母さん、お義母さん」
耳のすぐそばで低く響く声に、私は意識の薄皮を剥ぎ取るようにして目を覚ました。視界のピントが合うと、すぐ隣に亮介くんが腰掛けていた。
「あ、亮介くん。ごめんなさい、私ったら、うっかり眠り込んでいたみたい」
「毎日大変ですよね。本当にすみません、ありがとうございます」
「いいのよ、気にしないで。ちっとも大変だなんて思っていないし、当たり前のことをしているだけだから。あら、もうこんな時間。葉月もとっくに寝ているし、亮介くんもそろそろ休んだら?」
「明日は休みですから、夜更かししても大丈夫なんですよ。それよりお義母さん、もしよかったら、寝る前に少しマッサージでもしましょうか?」
その言葉に、私は一瞬だけ呼吸を止めた。どう答えるべきだろう。マッサージという名詞の響きだけで、胸の奥の冷暗所で、名付けようのないざわめきが小さな輪を描いた。
「いいわよ、そんな。亮介くんのほうが疲れちゃうもの」
「僕なら平気です。お義母さんの役に立てることなんて、これくらいしかありませんから。さあ、そこに座ってください」
「じゃあ……少しだけ、お言葉に甘えようかしら」
私がソファに座り直すと、彼は私の肩に両手を置き、優しく、しかし確かな力加減で揉みほぐし始めた。私は昔から頑固な肩こりと頭痛に悩まされていて、肩の筋肉はいつも冷えた粘土のように固まっており、ここ最近の育児の手伝いでその強張りは限界に達していたのだ。
彼の親指が的確にツボの深みへと沈み込むたび、心地よい痺れが走り、私の背筋が微かに震えた。指先は肩から肩甲骨の縁へと滑らかに移行し、固まった筋肉の繊維をひとつひとつ丁寧に解きほぐしていく。
「お義母さん、肩の周りが驚くほど硬いですね。すっかり凝り固まっていますよ。上からしっかり体重をかけたいので、そこにうつ伏せになってもらえますか」
私は促されるまま、ソファの上に身を伏せた。彼は私の開いた脚のあいだに両膝を割り込ませるようにして跨がり、先ほどよりも一段と強い圧力を肩周りに加え始めた。ぐっと沈み込む親指の重みが、私の身体のいちばん深い芯を捉えていた。

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