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孤独を埋めて、満たして【短編】
第3章 後日談
「ゆりちゃん、それ俺が混ぜる。ゆりちゃんの手、荒れちゃうから貸して」
「ただのハンバーグのタネだよ。それと…、成瀬くん、さっきから距離が近すぎるよ。……危ないからエプロン引っ張らないで」
付き合い始めて、数ヶ月。
私の家の狭いキッチンで、成瀬くんは私の後ろから抱きつくようにして、熱心に手料理を教わろうとしている。
学校一の問題児でプレイボーイだった彼の激変ぶりは、学校中を震撼させた。
女の子からの誘いはすべて「ゆりちゃん一筋だから」と一蹴し、今や私の姿を見つけるたびに大型犬のように駆け寄ってくる。
「ねぇねぇ。今の俺、髪の毛の先までゆりちゃんの匂いしかしないでしょ?」
成瀬くんは私の首筋に鼻を押し付け、ふーっと甘えるように息を吹きかける。その肌は驚くほど熱くて、あの日の、孤独に震えていた体温とは全く違う、満たされた熱を帯びていた。
「……成瀬くん、本当に変わったね」
「ゆりちゃんが俺を拾ってくれたからね。ねえ、早くご飯作って、いっぱいぎゅーってしてよ」
温もりを貪っていた彼は、私というたった一つの居場所を見つけたことで、その歪んだ独占欲を、すべて私への甘く濃厚な執着へと姿を変えた。
「大好きだよ、ゆりちゃん。一生離さないから」
私の指先にそっと唇を重ねた彼の瞳には、もうあの凍えるような虚無は、ひとかけらも残っていなかった。
( 終わり )

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