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ほしいままに
第27章 迷い
夜空を映した黒い川面に、立ち並ぶマンションの無数の灯りが落ちて揺れている。
それぞれの灯りの中に、できたばかりの夕食を囲む家族がいるのを想像した。
それは私にとって、遠い記憶に埋もれてしまった幻想だけど、団欒というものを想像しただけで、不思議な懐かしさと温かさが胸に宿る心地がする。
私は橋の真ん中に立っていた。
今来た道には丘の上の公園があって、橋を渡り切った先には駅前の繁華街がある。
公園の方向から、支店長がスマホをポケットにしまいながらこちらに歩いてきた。
「池袋支店に移った香宗我部君が、出勤しない俺を不思議に思って電話をくれた。彼に、退職するつもりだと話した」
支店長は言って微笑んだ。
「退職……ですか」

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