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ほしいままに
第27章 迷い
電話の向こう側に、悲しい目をして私の声を待っているお父さんが見える気がした。
私は応答ボタンを押し、そっと耳にスマホをあてた。
何をどう言ったらいいのか分からず、声も出せずにいると、お父さんの低くはっきりとした声が、耳を流れ落ち、私の心臓をぎゅっと締め上げた。
「お前は、私を見捨てる気なのか」
私は震える手で耳からスマホを引き剥がし、とっさに川に投げ入れてしまった。
ぼちゃん。
あまりにあっけない水音とともに、私と世界をつなげるあらゆるものが一瞬で消えた気がした。直後、自分がしてしまったことに慌てて、支店長の顔を見上げた。
支店長も私と同じく唖然とした表情を浮かべていたけど、それはすぐに悪戯そうな笑みに変わった。
支店長が自分のポケットからスマホを取り出す。
大きく腕を振って投げた。
暗闇が溶けて流れているような黒い川が、無機質に光る小さな機械を、どぶんと音を立てて呑み込んだ。

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