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悪癖とトラウマ
第5章 厄介
「失礼しまーす」

ガラガラと音をたてて室内に入ると、養護教諭の鷹西野分がいた。

「おはよう、どうしたの?早いのに」
「貧血です…1時限目体育なので…」
「あぁ、君は倒れるね」

そう言って笑う。

僕がよく貧血で倒れることをこの人は知っているのだ。

「…どうしたの?」

鷹西がまたきいてくる。

「へ?貧血ですって…」
「違う」

何が違うんだ

「そうじゃなくて…何か悩んでる?」

驚いた。

僕は悩んでいる。
昨日のことで。

「何でです…?」

でも

何でこの人はわかった?

「…勘だよ」

勘…ねぇ

「そうですか…でもはずれです」

嘘を吐いた。

面倒だから。

大人に心配されるのは嫌いだ。


「ハハッ僕の勘も鈍ったかなぁ?」

「そうじゃないですか?」

大人は嫌いだ。


「でも…一昨日来た時よりも傷、広がってない?」
「ーっ!!!!」

鷹西が僕の左手を掴む。

「ほら、包帯の範囲が広がってる。」

「気のせいですよ…」

「本当かなぁ?」

ああしつこい

だから大人は嫌いなんだ。

「だから…先生の気のせいで」
「だったらなんで僕の顔を見ないのかな?」
「…」
「いつもの君だったら怖いくらいに目を合わせてくるのに。」

人の目を見てしまうのは小さい頃からの癖。

「…」
「何で逃げようとするの?」
「いっ!!!!?」

鷹西が包帯の上を力強く握る。

「ほら、傷口が広がってる。どうしたの?」



ああ、こいつに昔相談したのは間違いだったのかもしれない。
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