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ポケットベル
第1章 名前
その名前を聞いた瞬間、

乾真斗(いぬいまさと)は箸を止めた。

テレビの中で若い俳優が笑っていた。

白木佳奈(しらきかな)という俳優。

「、、、白木佳奈」

真斗は思わず呟いた。

四十五歳になった今、

もう二十年以上も前のことだ。

それなのに、、、

その名前だけは不思議なくらい胸の奥に残っていた。

白木加奈。

俳優と漢字は違えど同姓同名。

懐かしい。

高校一年生。

一九九七年。

スマートフォンなんてもちろんない。

携帯電話を持っている同級生もまだ少なかった。

真斗が持っていたのはポケベルだった。

学校には持っていけない。

だから、家に帰ってからメッセージを送っていた。

十四文字ほどのカタカナ。

短い文章。

最後には必ず自分の名前を入れた。

「キョウハツカレタネ マサト」

すると、しばらくして返事が来る。

「アシタモガンバロウ カナ」

それだけだった。

学校では一度も話さない。

目が合うことすらほとんどなかった。

真斗は恥ずかしがり屋だった。

加奈もクラスの中心にいるような女子ではなかった。

友達と笑っている姿は何度も見た。

黒縁メガネがよく似合っていた。

落ち着いた雰囲気。

少し大人びた顔。

それだけしか覚えていない。

いや、、、

本当はもっと覚えているかもしれない。

「、、、今、どうしてるんだろう」

真斗はテレビを消した。

そしてその夜、、、

久しぶりに高校時代の夢を見た。
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