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不倫王の憂鬱
第4章 家庭忘却の女達
陽子をホテルの部屋に連れて行った彼は、いつもの様に衣服を脱ぎだした。

「早っ!恥ずかしいとかないんですか?」

陽子は戸惑いながら彼の目を見つめる。

”わざと下半身を見ないようにしているのが見え見えだな”

「だってさ、二人しかいないんだぜ、恥ずかしい事なんかないさ。君にしか見せないんだし。ある意味信用してる証拠でしょ?」

「はぁ…」

腑抜けた返事を陽子はしたが、彼女の彼への好奇心は増長した事を彼は分かっていた。

ふたりは他愛ない話をしながら浴槽に湯が溜まるのを待った。

自動的に湯の音が消え、程よい湯加減を確かめた彼は

「先に入りなよ」

と彼女に促した。

「は、はい」

彼女は脱衣を彼の前ではせずに洗面の壁に消えて行った。

彼は布掠れの音を聞きながら陽子の身体を想像していた。

カチャっとドアの閉まる音が聞こえ、彼はシャワーの音を待った。

シャワー音が聞こえたと同時に彼は衣服を脱ぎ、足音を忍ばせながら風呂に向かった。

ドアをそうっと開けると陽子は金色の真ん中が割れた椅子、俗にいうスケベイスに座りながら細い背中にシャワーをあてていた。

「綺麗だね」

「きゃっ!何で?えっ?どうして?どうして入ってくるんですか?」

彼女はあたふたとしながら胸を隠し小さく身体を丸める。

背骨が綺麗な曲線を描き出す。

「君と一緒に入りたかったからだよ」

”大概はこの時点で開き直りあとはなすがままに身体を預けるだけだな”

彼は先に浴槽に入りジャグジーのスイッチを押した。

「そこにあるバスバブルを取って」

陽子は入浴剤を彼に渡した。

入浴剤を入れた途端に細かな泡が湯面を隠していく。

「おいで」

陽子は意を決した表情で浴槽に入ってきた。

背中を向けながら入った陽子を抱きしめながらしばし髪の毛の香りを楽しむ。

「もう恥ずかしくないだろ?」

「うん、少し慣れたかも」

「だから一緒に入るんだよ、お互いに恥ずかしい所をさらけ出すと、なんか親近感湧かない?」

「そうかも。」

”ほうら、もう暗示にかかり始めたわ。このあとのベッドが楽しくなりそうだな”

彼は抱きしめていた手を胸の頂きにむけて滑らせた。
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