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梨華との秘密
第8章 拒絶の代償
 俺は軽くあごをシャクリ まだ、頭の中は整理の出来ない状態だったが、このままじゃ腹の虫が収まらなかった。
 車に乗るまで、俺は口をきかなかった。
 彼女がなにかを言ったが、全て無視して、車に乗り込んだ。


「足を開きな。携帯を外すからね。」


「えっ、そんな、、いえ、はい、ごめんなさい、、。」


 俺の顔を見た朱里が、素直に足を開いた。
 スカートの中に右手を突っ込み、引きちぎるように荒々しく携帯をもぎ取った。
 携帯を包むビニール袋は、ビッショリと濡れていた。
 ビニール袋ごと携帯を朱里の膝の上に、ポンと投げた。


「身体は正直なのにな。素直になれない女は嫌いだ。ホテルまで、送るよ。」


 突き放すように言いながら、車をスタートさせた。


「あの、縄を外すって、このままは、お願いします。」


 懇願するように言う、朱里の言葉を半ば無視するように運転しながら、俺は少し迷っていた。
 倉敷と岡山の市境を越え、


「朱里、そのまま帰すつもりだったが、いいだろう、縄だけは外してやるよ。」


「あっ、ありがとうございます。」


 朱里の顔が、パッと明るくなった。


「もう少し行くと、着替えの出来る場所があるから、そこでな。」


「はい、お願いします。そこで、、。」


 少し不安の色を瞳に浮かべながらも、彼女の顔色が明るくなるのがわかった。
 まもなく、八階建てのラブホテルが目に入った。


「あそこに入るからね。いいね。」


「はい、、。」


 小さく答えながら、朱里の声に期待感がこもっていた。
 だが、俺の気持ちは逆に冷たく冷え、


「着替えか?それだけじゃ、面白くないな。だが、俺は婚約者とその娘との時間を、お前のために割いているんだ。忘れてないか?」


「いえ、そんなことは、、。」


 彼女の顔に、少しだけ後悔の色が浮かんだ。
 しかし、彼女は膝に放り投げられた携帯を触ろうともしなかったのを、俺は見ていた。
 やはり、本心は別のところにあるんだと、改めて俺は悟らされた気がしていた。
 車を止め、道具の詰まったバッグを持ち、ホテルに入った。
 八階の部屋を選び、エレベーターに乗った。


「あの、ご主人さま、ここは良く来るんですか?」


 何気ない風に彼女が聞いてきた。
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