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梨華との秘密
第10章 聖夜の宴
 余り驚かない俺に課長が面白そうな目で、


「ふふうん、驚かないんだ?てことは、松川君には社長へのルートがあるってことだね。俺の事もよろしく頼むよ。」


 課長が小さな声で俺にウィンクしていた。


「えっ、まさか?課長、こっちこそですよ。」


 えっ、課長知ってんだ。
 だわな、大株主の息子だもんな。
 ほっとしてると、さらにニヤニヤしながら課長が畳み掛けてきた。


「それでね、松川君。定時になったら、上の小会議室に来てくれるかな?」


「あっ、はい。倉敷に行くメンバーですね?」


 大きくうなずきながら、課長が俺に、


「うん、頼むよ。それから、片山君は君が大阪支社の時の部下の娘さんだって知ってたかい?」


 やられた、爆弾投げてきやがった!


「えっ!初耳ですが?片山って、まさか?あの、片山君の!」


 俺は課長が知ってたことに驚いたのだが、上手く誤魔化せたらしい?
 あの娘が片山君の娘!
 少し驚きと、苦い後悔が俺の中に広がっていた。
 同時に、彼女の謎のような言葉が俺の中で何度も反響していた。


(私、知ってるんです。SMのこと、、、)


 て言った、彼女の言葉の謎が解けたような気がしていた。
 同時に少しの不安が、胸の中に広がるのを感じていた。
 しかし、大分前のことだしなぁ、しかし、あの子は覚えてたってことか?
 俺の思考が懐かしさの中に沈み込み始めるのを、呼び戻すように、


「松川君、片山君の家族の為に頑張ったもんなぁ。俺も片山君が親と同じ会社に入ってくるなんて、考えてもなかったよ。それと、今回の異動は関係ないんだけどな。」


「つまり、関係はないけど、面倒は見ろってことですか?参ったな。」


 俺の答えに、ニヤッとイタズラっぽい微笑みを浮かべ、


「うん、まあ、そういうことだよ。それに、ここよりは安全さ。彼女を守ってくれるかい?」


「うーん、嵌められたみたいですね。ふふ、良いですよ課長。引き受けました。ただ、他からは守れても、僕自身からはまもれないかなぁ?」


 思わず本気ともつかない冗談を返していたが、俺の不安を読みとったのか、


「その方がいいかもな?彼女、面接の時にこう言ってたからね。『私と母は、御社の社員の方に助けていただきました。だから、御社を希望しました。』てな。わかるよな?」
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