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第9章 夢

　結果的には大事に至らず済んだけれど、そのことがあってから、客と連絡先の交換などは禁止になった。店としても、従業員を守る処置は増えた。
　私個人的にも大きな出来事だったし、それがあるから、今回の電話も妙に気になった。
　藤森さんのストーカー事件は店長も思うところがあるらしく、真顔になって腕を組む。

「でもその電話の女、君島の名前をフルネームで言ったんだろ？　うちの店、名札は名字だけだぞ。それにあいつ、そんなにホール出ないだろ？」
「ああ、確かに」

　うちの店は、従業員全員が胸元に名札をしなければいけない。だけどそれは名字のみ。
　それと麻人はもともとキッチン担当で入った。キッチンも、役割によって四つのポジションに別れている。私はホールと、そこのポジションが主だったから麻人と関わる機会も多く、一時期ホールの人数が足りず、臨時でホールを教えて出てもらったけれど、基本的には中だった。客と関わることはない。
　最近は就活でそこまでバイトも入ってないし、客にストーカーされているという線は、薄いかもしれない。