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毒舌
第10章 琴美とおりょう
キッチンからは
トントンと
軽やかな包丁の音。
「イッちゃんママ~、何つくってるの?」
「ママってっ……!」
『声をかけるな。指を切り落としかねんぞ』
(おおぅ……)
そのうち
美味しい匂いが
漂ってきた。
イッちゃんが
ママなら素敵だな、
綺麗でカッコよくて
優しくて。
『そりゃまた欲張りだな。お前には普通に母親もいるだろ』
(それはそうだけど)
『おりょうは片親しか知らなかった。しかも父親は鬼畜だった』
トビの何気ない話が
ズシリと重く感じる。
『お前は恵まれてるな』
(うん……ごめん)
『……何で謝る?』
申し訳なくなる。
何不自由なく
幸せに暮らして
まだワガママを
平気で言ってしまうなんて。
『いいんじゃねえの?おかげで、おりょうみたくガリガリでもなくてさ』
(ちょ!なんで知ってるのよっ)
裸はまだ
そんなしっかり
見せてはいないはず。
『見なくたってお前もわかってるだろが』
(ううう~っ)