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毒舌
第16章 試してみない?


「本人の意識に刻まれていなくても、背景で流れていた噂話やテレビの解説なんかの情報は蓄積されていたりするの。それこそ無限の知の宝庫だったりね。貴女の意識では知らないと思っていても本当はすでに貴女の触れた情報だということもあるわ」


グラスを握る手が
小さく震えて
中の氷が転がる音をたてた。


「……難しくて、よく、」

「無意識の脳は凄いってことよ。人間がそれをなかなか使いこなせないだけで。貴女の願望が、貴女以上の能力を持つ彼を作り出すことは可能なの」


目の前は真っ暗で

今まであった『絶対』は
途端に揺らいでしまって

信じるすべてが
嘘みたいな世界だと、


それはまるで
自分の立つ地面さえ
実は存在しない、とか

あの空からは
誰かがいつも
見ているんだ、みたいな

常識の崩壊だった。


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