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毒舌
第4章 近くて遠い
「ねぇ、何かお話して。眠れない」
『何だよ何かって。ガキかよ』
「いいから」
いつもなら
ガキ扱いされるような真似は
極力しないんだけど
今日は
そんな気力もなかった。
ぐったりと萎びた心は
何もかも投げやり。
『ち、……むかーしむかし、あるところに』
「そーゆうのじゃなくて」
『うっせ。黙って聞いてろ』
仕方なしに黙ると
トビは話を続けた。
『おりょうという一人の娘がいた。』
初めて聞く名前に
私はまばたきをして
内心
ふざけた昔話で
ごまかすわけじゃない
トビにも驚いた。
私の知ってることは
何でも知ってるトビ。
だけど
トビは
私の知らないことも
たくさん知っている。
私はトビのことを
ほとんど
何も知らないんだと
うっすら気付いた。