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毒舌
第32章 日常非日常
「なかなか消えないね」
私の首筋を
指先でつついて
香島さんが呟く。
そこには
たくさんの
『あざ』がついている。
「もー。やめてください!」
私が怒ったふりで
首を押さえて隠すと
香島さんは
からかうでもなく
神妙な顔つきのまま
引っ込めた指を
自分の顎の辺りに添えた。
「端目にはどう見てもキスマークなんだけど……普通のキスマークは何日もせずに消えるしね」
あの日
トビがつけた印は
驚くべきことに
今も消えず
私の肌に刻まれている。
私とトビの
証明みたいで
ちょっと
ううん、
だいぶ嬉しい。
半面照れ臭い。
隠そうともせず
堂々としているせいか
あるいは
いつまでも消えないせいか
周りの人たちの関心は
すぐに薄れていったのに
香島さんは別だった。