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毒舌
第34章 昇華
「やっぱりニセモノかもしれない……!」
真顔で呟いた私に
トビはシラケた目をする。
「だって、だって……前にトビにキスされた時はなんかこう、気を失いそうにビビビって!」
「なんだよビビビって」
「うまく言えないけど、とにかく!あの痺れるような毒っ気がないの、トビなのに!」
お風呂に響く私の声も
シャワーに流されて
排水溝のなかへ消えていく。
「で?俺が俺じゃねえとお前は思うのかよ?」
「――ううん。トビだと思う。思うけど、なんか色々トビじゃない……」
私にはわからないだらけ。
何が起きているのかも
どうなってしまったかも
どうしていくのかも。
トビは
大きな手で
私の頭を撫でた。
「ゆっくり話すから心配すんな」
そのままワシャワシャと
私の髪をシャンプーで
泡立てていく
抱き締めながら。
なんか変な気分。
私はトビの胸元にもたれて
静かに目を閉じた。
眠ってしまいそうに
気持ちがいい。