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毒舌
第36章 花びら
微かな水音の合間に香島さんの掠れた声がした。
「キスしかしてないのにこれ?」
そこだけ聞くと私が凄く淫乱みたいかもしれないけど、そもそも香島さんのキスは濃密、長い時間をかけてじっくり魅了してきたくせにズルい。
それとも。今まで香島さんが見てきた女の人たちに比べても私が感じやすくなっちゃってるのかな、わかんないや。
「意地悪しないでください……」
ただでさえ恥ずかしいのに。
私の中へスムーズに入ってきた香島さんはただ静かに深く息を吐き出して、私の体を抱き締めた。
「……ヤバい、すごく気持ちいい」
そう言ってもらえるとちょっと安心。色んな人とエッチしてきた香島さんの場合、なんかこう……ね。
「喜んでもらえて…良かった、です」
予想外に静かな行為は恐くもなくて、私も香島さんの背中をそっと抱き締め返した。皮膚の下の脈とか体温とか肌の湿度、色んなものが伝わってきて。それは体の中と外どちらも、お互いがお互いを感じていた。
「俺ね、……実は初めてなんだ」
「何がですか?」
私の中で何か伝えようとうごめく気配。少しずつ込み上げてくる。
「コンドームなしで直接するの、…っ」
「私、妊娠とか、しないみたいなんで…大丈夫ですよ」
香島さんの切なそうな苦し気な眼差しが私を覗き込んだ。
「そう、なの?残念……」
自嘲気味の小さな笑いで私の肩にキスを落としていく。
「形だけでも、家族になりたかったな」
どんな顔をして話してるかはもうわからなかった。
「コンドームは避妊具ではあるけどさ、大切なこが出来たとき、他の人の病気とか、うつしたくなくて……なしでしたいって思えたのは、琴美ちゃんだけだったけど」
「…っあ、」
じりじりと燻っていた快感の波が急激に高まり、香島さんはゆっくり動き始めた。