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毒舌
第36章 花びら
しばらく会話が途切れてただ没頭するように身を任せて、熱い息を吐きながら私は何も言わないトビの視線を思った。
そばにいて見ているわけじゃない、私の中にいて筒抜けなだけ。むしろ私がどんな顔をしてるかは香島さんにしか見えてない。
「んん…!」
声が漏れてしまう度、それを聞きたいと言っていたトビを思い出してしまう。きっと微かな音ももらさず聞いている、から。極力声を出さないように我慢した。
香島さんはまるで、私の感覚がわかってるみたいに快感の波が来たタイミングでそれに合わせて動くの。波を待って乗る、サーフィンみたいに。私の体をやたらに攻めて無理矢理引き出そうなんてしない。しなくてもやがてくることを知ってるみたいに、長く静かな行為。だから、波に乗り始めてからの貪るような動きが、私を狂わせそうになる。
噛み締めていた筈の、声を出さないというそれだけのことが、難しい。
「ひゃっ…香島、さ、……そこ、駄目っ」
「そんなに締め付けられたら、俺ももたないよ」
汗で額に貼り付いていた髪を指先で均してくれた香島さんが、おでこにもキスをした。
「ふ ぁあ、(も 駄目、イッちゃう、イッちゃうぅっ)」
「一緒にいこう」
爪先まで強ばった体を抱き締めて、香島さんが舌を絡めてきた。トビが見てるのに、トビ以外の人とイッちゃうなんて。