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毒舌
第37章 禁断
「香島はもう死んでる」
形の良いトビの唇が呟く。
「もう死んでるんだ」
私は唖然と腕の中の香島さんを見た。知ってる。さっきから息をしてないことも。知ってる。
「だから…たすけてよ」
「…………」
私が無理を言ってるからか、トビは口を噤んでしまう。トビなら何でも可能にしてしまえるんじゃないの?
あり得ないことだってトビなら簡単に!
しばらく何も言わないトビに、私はまたさめざめと泣き出した。どうしてこんなことになったのか現実を受け入れたくなくてやっぱり私は泣くしか出来なかった。
「香島さんを、生き返らせてよ……」
もうそれは、ただの子どもの我が儘みたいに。いやだいやだというようなもので。どうしようもないって頭ではわかっていながら、それでもやめられない。
トビの大きな手のひらが私の頭に乗る。躊躇いがちにゆっくり、トビが口を開いた。
「お前のいのちと引き換えだ」
「……っ?」
顔をあげた私の涙を指で掬いながら、トビは苦しげに目を細めた。
「香島を生き返らせるには代わりのいのちがいる。無理じゃあねえ」