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毒舌
第37章 禁断
「おまえが。とび様を連れていってしまったから。わらわは千年なきました」
私は微笑んだままの氷女にすくんでいた。
「あ、あぁ……」
きっとこのまま殺されてしまう。縄張りに入ってしまったとかそんな簡単な話ではなくて、ずっと、このひとは私をきっと。
ガクガクと全身が硬直する。寒さと恐怖とショックと、あらゆる恐慌状態に動けない。
「愛されて羨まし」
氷女の氷よりも冷たい指先が私の唇に触れた。
心臓が止まりそうだった。
***
どれくらいの時間そうしていたのか、一瞬かはたまた永遠か。私にはなすすべがなくてもう動かない香島さんにそれでもしがみついて。
気がつくと辺りは静かで、風は止んでいて、積もった雪をキュ、と踏んだトビの足音だけがした。
並んで氷女と烏の首が置物みたいに綺麗に転がっている。やっぱりトビは強いんだな、って。どこか遠い世界のことみたいに意識の片隅で思った。
トビは私の傍まで来ても何も言わない。香島さんを見ても何も言わない。
泣いたまま、トビを見上げる。悲しそうな目をして私を見ているトビを。
「……ね、トビ……香島さん、たすけて……?」
声が震えて息が苦しい。
「たすけて、トビ……くるしいの、」
ボロボロと涙は止まらない。トビならどんな奇跡だって朝飯前に決まってる。きっと香島さんの怪我も一瞬でなかったことに出来るもん。
「……琴美、」
だから早く助けて。