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毒舌
第37章 禁断
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病室はどこも白くて気が滅入る。消毒液臭いのも、微かな電子音も、寝心地悪い狭いベッドも、たいして美味しくもない食事も。退屈な時間も。治療も検査も。何もかも気が滅入る。
命があっただけありがたいよね、と感謝をすべきなんだろうけれど。まったくといってそういう気持ちにはなれなかった。
自分がどうして今入院しているのかも実はよくわからない。社員旅行で行った雪山で遭難して怪我だらけで発見されたって?雪男に襲われたんじゃないかなんて噂されるほどまったくに奇妙、なぜなら俺にほとんど記憶がなかったからだ。社員旅行の記憶も曖昧、一体誰とどんな時間を過ごしたかも不明。なんで一人だけ山頂付近で遭難してんだって話だよね。話によると猛吹雪だったらしいけど、ね。
「直哉、お見舞いに来てあげたわよ」
カーテンの向こうから姉貴が顔を出すのをつまらなそうに見て俺はため息をついた。
「何よ、少しは歓迎なさいよ」