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キスマーク
第7章 l
私は身体ごと、しずかの胸元に抱きしめられて
柳下くんから遠く離されていた。

「だろ。俺のだから。余計なちょっかい出すなよ」

声は冗談めかしてるのに
目が笑ってないよ。しずか。

「分かってますよ。加藤さんの事を名前で呼ぶ女性に興味があっただけです」
「そんな興味は捨てろ」

柳下くんはしずかの独占欲発言に笑うと「トイレに」と言って席を立った。

その間に、しずかはお店の大将を呼ぶと
何やら話していて
明らかに二人分より多い紙幣を渡していた。
へ~。太っ腹。

靴を履く目の端でそんな行為をとらえて
履き終わると柳下くんが席に戻ってきた。

「じゃ、またいつかラッパの話しようね」

良い気分でフワフワするから
思わずしずかの腕に自分の身体を巻きつけた。

「じゃ、俺ら帰るから」

そう言うと席のあちこちから
「え~」
なんて声が上がって、
それは明らかに私への不満も入っている。
私が来なければしずかはお開きまで一緒にいたんだろう。

「二人にさせて」

なんておどけて言うけど
しっかり私の肩を抱きよせた。

そのままお店を出て
少しも歩かないでタクシーを止める。

あぁ。この地名はしずかのマンションか。

運転手に行き先をいうしずかの声を
うっすらと聞いていた。



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