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第12章 第一部･第三話　【月戀桜～つきこいざくら～】　十六夜の月

「亭主じゃないよ。あたしが現役の頃からのお馴染みさんで、今はあたしの庇護者とでも言えば良いのかしら。何しろ十三のときからの付き合いなんだ。あたしが二十歳で現役引退して、この見世を持つときにも色々と力になってくれてね。まあ、世間的にいえば、あたしはこの人の囲い者、妾、愛人、色々な言い方をする人がいる。もっとも、そんな風に思ったことは、あたし自身は一度としてないけど」
　実に彼女らしい言い方で、美桜は肥前屋との長年の関係を簡潔に説明した。