この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
その瞬間、小紅はまたもや悲鳴を上げそうになり、慌てて手のひらで口を覆った。外観はこじんまりとしているものの、御堂内は存外に広そうだ。中央にはこれも崩れかかった祭壇があり、かつてここが寺であったことを物語るかのように煤けた黄金の阿弥陀如来像が安置されている。
その他には仏像らしきものは何一つなく、売られたか盗まれたか定かではないが、寺らしき名残をとどめるものは残されてはいないようだ。しかし、小紅を仰天させたのは、そのようなものではなかった。
その他には仏像らしきものは何一つなく、売られたか盗まれたか定かではないが、寺らしき名残をとどめるものは残されてはいないようだ。しかし、小紅を仰天させたのは、そのようなものではなかった。