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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第12章 第一部・第三話 【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月
 栄佐は車座になった男たちとは少し離れ、後方に一人控えている。
 財宝は、煤けた仏像などとは比べものにならないほど燦然と輝く黄金色の小さな仏像がちんまりとした厨子に納まっているのや、鮮血を思わせる珊瑚細工の宝樹、つまり玉でこしらえた作り物の鉢植えなど。その他も値もはかれぬような青磁の香炉、螺鈿細工の文箱、どうやら瑠璃らしい玉をびっしり連ねた首飾りといったものが無造作に積み上げられている。
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